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気候変動政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書(AR5)

 2014年4月には、気候変動政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書(AR5)の3つのワーキンググループの政策決定者向け要約が出揃った。そのなかで、新たな知見に対する考察をまとめておく。  低い濃度目標レベル(二酸化炭素(CO2)換算で約450 ppm)を達成するためには、オーバーシュートシナリオも多くの分析で示されている。オーバーシュートシナリオは、特定の濃度目標を超える可能性を高め、早期の排出削減の重要性や技術開発・導入の重要性をより強調するものである。Z650オーバーシュートシナリオは、AR5で示されたRCP(代表的濃度経路)2.6(低位安定化)と4.5(中位安定化)の中間で、代表的な実効性がありかつ低位安定化シナリオである530ppmオーバーシュートシナリオとほぼ同等である。この530ppmシナリオでは、2100年に500ppm程度で1.8~2.0℃ の温度上昇となり、長期的に2.0℃を守る可能性は五分五分となる。一方、我々のオーバーシュートシナリオはゼロ排出シナリオのため、 2℃目標は達成可能であることが示されている。  京都プロトコルの枠組みと排出権取引の有効性に疑問が呈された。しかしながら、自主削減目標方式では、削減努力が不十分なため、温度上昇が3.0℃未満と予想されている。やはり2℃目標達成には、国際目標型の削減目標設定が必要だと考えられている。しかしその実現可能性は現時点では低く、当面は2国間排出削減協調などの自主削減目標方式の実現に努めるべきであろう。

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